映画好き!ドラマ大好き!とにかく観なきゃ始まらない!

映画好き!ドラマ大好き!!LULUが、興行収入・視聴率に関係なく映画・ドラマを好き勝手にレビューします。愛溢れるエッセイをどうぞお楽しみください!

ドラマ

ノルウェー発フランスドラマ「SKAM FRANCE」2

アマプラ見放題に登録されたと話題になっていた「SKAM FRANCE」。




日本で配信されているのは、全7エピソードのうち「EP3:リュカ」と「EP4:イマネ」のみ。
今回はEP3に引き続き、EP4イマネ編も完走。あっという間だった。

ノルウェードラマの「SKAM」

「SKAM FRANCE」の原型は社会現象を巻き起こしたと言われるノルウェーのドラマ「SKAM」(放送は2015〜2017年)。SKAMとは「恥」の意味だそう。

「SKAM」は、一話20分程度のショートドラマで、SNSと公式HPを連動したところが若者を通して社会問題を描くというテーマに合致して爆発的な人気となった。
 

一週間で起こったことを20分程度にまとめて放送しているのだが、放送後から次の放送までに公式HPにはドラマ内の登場人物がやりとりした会話がリアルタイムにUPされ、一週間分、HP内にUPされたものを編集して放送するという趣向のドラマだ。


日本で言うなら、NHKのドラマがHPを使って次の放送までに登場人物のアカウントのやりとりをUPし続け、次週予告映像を小出しにして見せていく、という感じ。


視聴者は次のドラマまでの一週間、登場人物のリアルタイムのやりとりを追いながら、いつの間にかフィクションの世界に引き摺り込まれてしまう。


日本のドラマ界ではこのような手法はなかなか生まれづらいのかもしれないが(当日視聴率が下がるのではないかという危惧など)本編が爆発的な人気を誇っていることを考えると面白いモデルだなと思う。

「SKAM FRANCE」とは

社会現象となったノルウェードラマはその後欧米で次々とリメイクされる。その中でも原作に忠実で内容も素晴らしいと人気を誇ったのがフランス版。

本家のEP1〜4に3エピソードを加えた全7エピソードで構成。それぞれのEPで主役が交代していき、EPごとのテーマがある。
 

EP1 ネットいじめと友情
EP2 性的虐待
EP3 カミングアウト(全10話)
EP4 信仰と人種差別(全10話)

EP5 難聴-目に見えない障害と障害
EP6 中毒と自己破壊行動
EP7 10代の妊娠


現在日本に上陸しているものは、EP3と4のみ。本国と同じく、一週間の出来事で1話が構成されている。高校を舞台にし、EPごとで主役は変わるものの出演者は被っている場合が多いので、やや公開されていない部分の主役の心情は理解しきれないところもあるが、全体の流れの上では問題なく見られる(楽天TVとアマプラで視聴可能)。

EP4:イマネ編

EP4は信仰と人種差別。主人公であるイマネはムスリムだが、昔からの友人たちとは違う高校に通っていて、人種も宗教も違う友達とうまく付き合っていた。

スクリーンショット 2021-06-13 11.19.31


兄の友人であるソフィアンにほのかに恋心を抱いているが、厳格な母、日常生活で人種や宗教において疎外感を抱いているイマネは徐々に友情にも恋にも疑問を抱くようになっていく。


頭もよく、自分の考えを迷いなくはっきりと持っていたイマネ。その純粋さは、成長するにつれ様々な問題と直面していくことになる。

思春期が衝突するものは

イマネは最近家族・友人・そして好きな人との距離を感じるようになっていた。自分は信念を持って信仰しているけれど、それはそれ以外の人たちの理解を得るのが難しいことでもある。
そしてムスリムに対する偏見が根強いのも事実。


母親も信仰を忘れないようと厳しい目を向けてくるし、周囲の友人たちが自由に謳歌していることを宗教を理由に共有できないことへの焦りもある。


ただし、これは宗教でなくても誰もが通る道のように思える。仲良しの友達と何でも一緒、共に全てを分かち合ってこその仲だと思える年頃に、両親が厳しいから、自分はそこまで楽しめないから、あるいは金銭的な問題など二の足を踏んでしまう要因があり、そこから生まれる苛立ちをどこにぶつけていいのか分からない。


自分以外のみんながことさら仲良しに見えて、ついていけない自分を歯痒く思う。孤立することへの恐怖は学生時代誰もが経験していることだと思う。


イマネは恋心を自覚するにつれ、いやはっきり自覚できていなかったからこそ、自分の中に生まれる恐怖と焦燥の正体がわからず苦しむ。

恋をして得るもの、失うもの

イマネはEP3において、カミングアウトに悩むリュカに対して冷静で俯瞰的な視点でアドバイスをしている。同世代の友達と比べても成熟した感覚を持っていることがよくわかるけれど、自分が体験したことのない気持ちに触れた時、自分でも戸惑うほどに未熟で子供じみた行動に出てしまう。
(↓イマネとイマネが恋する相手、兄の友人のソフィアン)



これは優等生のイマネ自身も予想できなかったのではないのか。

それほど恋というのは人の精神をコントロール不能にしてしまうものだと思う。時に素晴らしい幸福をもたらすものでもあるし、人を悪魔にもしてしまう。

 

EP3において付き合うことになったリュカの友人のバジルとイマネの友人のダフネ。2人はあっけらかんと自分たちの恋愛を謳歌し、幸せを隠そうともしない。そんな2人をイマネはただ単純に祝福することができたのか。
(↓バジルとダフネ)




今までの自分ならば友人の幸せを無条件に受け入れられたが、自分が拒絶したソフィアンが別の女の子といい雰囲気になった頃からイマネは徐々に正気を失ってしまう。
 

自分が自分でなくなる瞬間、イマネは怖かったに違いない。これはお祈りを捧げる瞬間ですら、彼女を捉えて離してくれなかった。


誰もが思い出すのではないのか。好きだ嫌いだと言っていた先に、2人でデートしたりキスをしたりする瞬間が訪れる。そこからこれまでの自分とお別れをして、別の自分になってしまう恐怖と幸福。背中合わせの変化に、自分も周囲も戸惑う。そのズレを穏やかに自覚することもあれば、受け入れられないこともある。子供から大人になっていく、その戸惑いと受容には人種も宗教も関係ないのだと思う。

自分が生きてきた世界が別の何かと融合するとき

このEPにおいて、障壁となっているものの一つは宗教であったけれど、誰しも生きていく中で、友人や恋人との隔たりに悩むことはあると思う。
 

幼い頃は家族が世界の大半で、その中で得た居心地の良さに甘えて生きてきたけれど、自分の世界が広がるにつれ矛盾する気持ちが出てくる。
子供として守られたい気持ち、大人として認めてほしい部分。全ての人に理解される関係であれば苦悩することもないだろうけれど、大抵の人はその狭間に揺れ、これまでの自分と変化する自分との折り合いがつかずに悩む。


そこを通り抜けた先に、他の誰でもない「自分自身が」納得できる未来があるのだろうけれど、今回この物語を通して私は過去にそういうことがあっただろうかと考えた。闘うことを避け、適当に誤魔化して生きてきたのではないのか、とそんなふうに思えたEPだった。


信仰については自分は本当に知識が浅いし、イマネの苦悩を理解したとはとても言えない。けれど家族の考え方や友達との隔たりなど、分からない者なりに充分考えさせられた作品であった。

そしてこの物語の中でも、全ての人がイマネが望むように、ムスリムについて理解しようと変化する、あるいは理解を示したとは言えなかった。ただそれが現実なのだろうと思う。ただご都合主義に終始していないところもリアリティがあった。

このEPを通じて

イマネは疑問を感じた当初は、自分でも分からない怒りを処理しきれずに悶々とするのだけれど、最後にはちゃんと覚悟を持って向かい合い一つ一つ丁寧に解きほぐしていった。
 

とは言え、愛するだけでは乗り越えられないものもあるのだろうけれど、イマネには仲間がいて、家族がいて、確固たる信念がある。それだけでも自信溢れる彼女の未来がその先に見えるような気がした。ずっと信じ続けているものが強く心の中にある、そのことは彼女を縛ることもあるけれど、逆に自由にもするのだと思う。
 

EP3で意味深に取り上げられていた、イマネとリュカの恋人エリオットとの関係。今回のEPで謎が解けます(一番左がイマネの兄。そのことに絡んできます)



それにしても、EP4では主役ではないにせよ、画面の片隅にでもリュカとエリオットの姿を探し、どうしているのか考えてしまった。
 

出演シーンはまぁまぁあるのだけれど、リュカの会話で「エリオットと喧嘩した」というセリフを聞くだけでちょっと胸が痛かった。どうもエリオットリュカ中毒だ。この2人で映画とかやってくれないな・・・
 

そして他のEPもぜひ見たい。配信スタンドの皆々様、どうか他のEPも上陸できるよう取り計らっていただけませんでしょうか・・・

ノルウェー発フランスドラマ「SKAM FRANCE」

アマプラ見放題に登録されたと話題になっていた「SKAM FRANCE」。
日本で配信されているのは、全7エピソードのうち「EP3:リュカ」と「EP4:イマネ」のみ。

まずは「EP3:リュカ」を見た。

 

もとは社会現象にもなったノルウェードラマ

まずは、「SKAM FRANCE」の原型となったドラマがある。
それが社会現象を巻き起こしたと言われる、ノルウェーのドラマ「SKAM」(放送は2015〜2017年)。


ノルウェーの公共放送で始まったドラマ「SKAM」は、一話20分程度のショートドラマだが、SNSと公式HPを連動したところが若者を通して社会問題を描くというテーマに合致して爆発的な人気となる。


ドラマは週一という頻度で、一週間で起こったことを20分程度にまとめて放送する。その辺りは従来の形態と変わりないが、放送後から次の放送までに公式HPにはドラマ内の登場人物がやりとりした会話がリアルタイムにUPされていく。ドラマで放送されるのはその前の一週間、HP内にUPされたものを編集しているという趣向だ。
 

視聴者はドラマ放映までの一週間、随時登場人物たちのリアルなやりとりをチェックしながら、全体のストーリーを想像して本編放送を待つことになる。
 

日本で言うなら、NHKのドラマがHPを使って次の放送までに登場人物のアカウントのやりとりをUPし続け、次週予告映像を小出しにして見せていく、という感じだ。画期的な試みであることがわかる。

視聴者はどうしても次の放送までにHPを逐一チェックし続けることになり、それらを繋げたドラマも当然気になる。相乗効果で見る側の注意を常に惹きつけながら、ドラマの世界に巻き込んでいく。視聴者はいつからか、フィクションの世界に迷い込み、そこで生きることになる。

「SKAM FRANCE」とは

社会現象となったノルウェードラマはその後欧米で次々とリメイクされたが、その中でも原作に忠実で内容も素晴らしいと人気を誇ったのがフランス版。
 

各話にはセンテンスごとで大きく曜日と時間が映し出され、今何曜日の何時を生きているのかがわかる。一話ごと土曜日から金曜日までの一週間の出来事を描いていて、月曜日は当たり前にちょっと憂鬱、そして金曜日に近づけば近づくほど気分は浮つき、週末の出来事はその次の週へと繋がる。

フランス版は、本家のEPに追加して3エピソードを加えた全7エピソードで構成。それぞれのEPで主役が交代していき、EPごとのテーマがある。


EP1 ネットいじめと友情
EP2 性的虐待
EP3 カミングアウト(全10話)
EP4 信仰と人種差別

EP5 難聴-目に見えない障害と障害EP6 中毒と自己破壊行動
EP7 10代の妊娠


以上はネット上に公開されていたものを直訳したもので、もしニュアンスなどで間違いがあったとしたら了承いただきたい。

現在日本に上陸しているものは、EP3と4のみ。本国と同じく、一週間の出来事で1話が構成されている。高校を舞台にし、EPごとで主役は変わるものの出演者は被っている場合が多いので、やや公開されていない部分の主役の心情は理解しきれないところもあるが、全体の流れの上では問題なく見られる。

リュカ編:カミングアウト

まずはEP3のリュカ編。リュカは自分がゲイであるという自覚があるが、厳格なキリスト教信者の母親と、異性愛者である友人たちに囲まれ、ずっと言い出せずにいた。

ある日、転校生のエリオットと出会いその美しい顔立ちと憂いのある瞳に一瞬で惹かれてしまうリュカ。ルシルと言う彼女がいるエリオットに対し、自分に好意を向けてくれる子に気のあるふりをして誤魔化し続けるリュカだが、エリオットと二人きりで話すチャンスが訪れ彼の不思議な魅力に触れるうち、気持ちが抑えられなくなっていく。

リュカを演じるのは↓手前の彼アクセル。バックハグをしているのが、エリオット役のマクソンス。

 
恋をした2人の美しいブルーアイズにこちらも魅了されてしまう。

リュカは苦悩している。本当は正直になりたいのだけれど、これまでずっと自分を偽り、時には同性愛者を茶化したりしていたため、今更カミングアウトもできず苦しむ。加えて母親は敬虔なクリスチャンでやや精神不安定、到底同性愛は認められないだろう。親にも友人にも言えない事実は、自分にとっては最も重要で根幹を成す部分。
 

そこを偽り続けた行動はさらに自らを孤独と苦悩に追い込んでいく。ただし、正直になったからと言ってどうだ、何もかも失うのではないのか。
 

袋小路に迷い込んだ彼の決断には、苦しみ抜いたからこその景色がある。

リュカが愛するエリオットの人物像

エリオットは、映画監督を目指してクラファンを立ち上げるなどアーティスティックな一面を持つミステリアスな人物(彼が作りたい映画のプロットは後々リュカとのシーンに関わってくるので要チェック)。

リュカが初めて彼の家に行った際、壁に貼り付けたイラストを発見する。そこに描かれたアライグマを自分だと言うエリオット。
 

リュカの「自分のことはどう描く?」の問いに「考えとく」と返すエリオットだが、後にハリネズミを模したリュカのイラストをプレゼントする。

このエリオットのイラストは後にもたびたび出てきて、リュカに思いを伝えてくるのだが、これが本当にキュート。
 

HPにリンクしてあるインスタを見ると、イラストが何点か確認できる。最初ご本人のアカウントだと思い、もしかして彼が描いているの?と思ったけれど、更新は最近のものはほぼないし、別のアカウントがご本人マーク付きであるので、これはドラマ用なのかな。これはリュカのアカウントも同様。





二人の間でやりとりされる、二人を表すアライグマとハリネズミがとても素敵なのでぜひ注目してほしい。このグッズないのかな・・・Tシャツとか、ポストカードとか、トートバッグとか!!あればぜひ欲しい!
 

アーティストでミステリアスで魅力的なエリオットなのだが、EP後半では彼の秘密が露呈し、それがリュカをさらなる苦悩に追い込んでいく。多面的な顔を持つエリオットの繊細なキャラクターを存分に堪能してほしい。

BLというよりは、人間がその人らしく人を愛するということ

同性愛を描く、というと昨今では話題の、私も大好きなBLドラマを重い描きがちだけれど、今作はそこに宗教や友情、そして苦悩する若者の成長を織り込んでいて、シンプルに楽しく幸せなラブストーリーにはしていない。
 

2人の愛を確かめ合うシーンは濃密で美しく描かれているので一見の価値ありではあるが、それだけに止まらず、エリオットの問題が露呈することにより愛し合う2人に訪れる困難とそれに対する覚悟も描いている。
 

告白し結ばれた2人がいつまでも楽しく幸せに暮らしました、という結末は安心はするけれど実際にそんな恋愛はあるのだろうか。
 

単にドラマティックにファンタジーで終わるのではなく、現実世界とリンクするドラマだからこそ当たり前にある大なり小なりの衝突や障害から目を逸らさない。
 

そこにあるのは、1人ではない、そして2人きりでもない。周囲にいる人たちの些細な一言や行動がその人にとって救いになることがある。
 

お互いしか見えず盲目になりがちな若い恋愛を、それまでに築いてきた関係性の中で、問題の答えや解決を見つけさせる。その「頼る」ことも時には大事であることが、当たり前に描かれている。

寄せ合って生きていくことに若いも大人も年寄りもなくて、改めて友情や家族との繋がりを見出していく。
 

リュカはシェアハウスに暮らす仲間たちと時に距離を取りながら、時にバカ騒ぎをして憂さを晴らし、共に泣き、抱き合いながら次に進む。その脆さと逞しさを受け入れながら生きていくことが、共生・共存なのだと思う。

30分にも満たない一週間を全10話。
 

あなたも今日から「SKAM FRANCE」で、別の世界にいる「あなた」を体験する

次はEP4のイマネを見ることにする。イマネはイスラム教徒である部分では同級生たちとの隔たりを感じながらも、信念を強く持つ女性。

EP3にもイマネは登場し、リュカと時々会話をする。
その中でも印象的だったのは、カミングアウトで悩んでいたリュカと言い争いのようなことになった時に彼女が発した言葉「憎しみは宗教からではなく、恐怖と無知から生まれる」が印象的。

この言葉を頭の中に置きつつEP4を見たい。

 

日本のドラマが停止した・・・

完全にこの騒動で4月スタートの日本ドラマが停止してしまいました。

実は今私は、タイのBLドラマにハマっておりまして、過去作品がYouTubeで見られたりするのでそれをザクザクと掘り起こす毎日。

過去作品ということはもう完結しているものがほとんどで、結果的に「続く」のあとがすぐ次の回が見られるとあって、クリックの手が止まらず、知らぬ間に世も更けて行ったGWでした。

つくづく日本のドラマに出ている人たちって洗練されていておしゃれだなと思うのだけれど、タイドラマを上回るエネルギーがないのかなぁと思ってしまう。

見始めても途中で嫌になったり、何となくシラけてしまったり、いったんそれてしまったこの情熱を日本ドラマに再び戻せる日が来るのかなぁと思った自粛期間でした。

これまで見たものを、noteの「タイ沼ライフ」というカテゴリーでUPしているので、



ぜひご覧になってください。

長文ご容赦ください(笑)ほとばしる愛が止まらなくて・・・

それでも腐女子のように妄想が止まらん〜というところまでは行っていないので、そのうち飽きてしまうかもしれないのだけれど、タイではもう緊急事態が解除されて色々と緩和されたのかドラマ撮影が始まっているようなので、新作も含めもう少しタイに沼りたいと思います。
 

ドラマティックなノンフィクション「ダークサイドミステリー」

NHKBSプレミアムで昨日放送された「ダークサイドミステリー」
本当にあったミステリアスな事件を紐解く番組で、初回は実にドラマティックな内容でした。

 

「ナチスを騙した男 20世紀最大の贋作事件」と題し、贋作作家としてフェルメール作品を多く売り捌いた画家メーへレンの生涯を紐解き、なぜこんなことが起こったのか、真実に迫ります。

メーへレンは写実主義の画家。巧みな技術はたちまちに評価され若くして賞を受賞。
建築家を目指していた彼が、大きく画家へと将来の舵を切ったことがそもそもの悲劇の始まりでした。

彼が生きていた時代は20世紀。
これまで精巧に風景を描写したり、宗教画などが主流だった絵画の世界にピカソなどに代表される新しい風が吹くようになっていた。
シュールレアリズム、キュビズム、ダダイズム、これまでにない独創的なタッチや題材などがもてはやされるようになり、メーへレンは画家としてのスタートを切った瞬間から「古い」と言われるアーティストの代表とされるように。

絵が思うように売れず「絵画の修復」という道を選択せざるを得なくなった彼に、とある真贋が不明な著名画家の作品が持ち込まれた。
その傷みのひどい絵画をほぼ描き直す形で修復したところ、本物と称されて高値がつく。これにより、彼のさらなる転落人生が始まったのだ。

本物と一旦称された上で、権威ある専門家が登場。これは最近描かれた贋作であると見抜き、メーへレンもそれに加担したと批判された。
画家としてのプライドも地位も傷つけられたメーへレンは復讐を決意。

彼を貶めた権威ある専門家が、最も得意としている分野「フェルメール」の贋作で彼を見返してやろうと思いついたのだ。


以前読んだ、日本が巻き込まれた世紀の贋作画商と言われたイライ・サカイ についての本にも書いてあったけれど、




最も巧妙な贋作は、有名作品をコピーするのではなく「その作家が最も描きそうな未発表の作品を作ること」。

復讐に取り憑かれたメーへレンは、見破られた「年月による絵具の固まり具合」の壁を越えるために絵の具の調合に細工を施し、さらに年月による表面のひび割れ、そこに入り込んだ汚れまでも忠実に再現。
キャンバスもフェルメールが生きていた時代に描かれた別人の絵画を、丁寧に剥ぎ取ってからそこに描くという念の入れようでただ美術界に復讐するためだけに、フェルメールの絵画を作り上げた。

フェルメール作品は、作風が変わる間際数年間の作品が現存しておらず、「そのころに描かれたものがどこかにあるのではないか」という見方が強かった。
それを逆手にとったメーへレンは、うまく作風が変わる前と後の作品をミックスして、移行期の作品としての「贋作の新作」を描き上げていた。

この作品にかける並々ならぬ思いは、フェルメール作品を愛していたアート界の重鎮の願望を見事にすくいとったのだ。
この時期の作品があれば自分は世紀の大発見をしたことになる、という欲。フェルメール作品を研究し続けてきた自信。それが真贋を判定する目を狂わせた。

高値がつけられ復讐を遂げたメーへレンの手はその後止まることはなく、酒と薬物、そして女にも溺れながら、さらなる転落への道を辿ることになる。

フェルメールの贋作作品を次々と、ある富豪の持ち物だとして売り捌き、それはヒトラーに対抗心を燃やすナチス高官をも騙すことになった。
 
結局メーへレンは自白により、贋作作家であり、過去に本物と偽って大金を騙し取ったことが露呈されてしまうのだけれど、それは仕方のない事情からだった。

ナチスドイツが崩壊した際に、母国の宝であるフェルメール作品を敵国ナチス高官に売ったことが露呈したメーへレンは裏切り者としてバッシングを受けたのだ。
仕方なく「あれは贋作だ」と告白するメーへレン。真偽を求められたために法廷で実際に描いてみせたほど、彼の作品は精巧にフェルメールの画風を再現したものだった。


腕もあり、才能もあったメーへレン。けれどその生涯は嘘と葛藤に満ちたものだった。
大金を手に入れ、裕福な生活を送ってもなお、埋められない空白を酒と薬と女で必死で埋めようとしていた画家。

彼の作品も実際写されていたけれど、 正直フェルメールと言われてもあまりピンとこなかった。
巧みではあるけれど、魅力は感じなかったし、逆になぜこれを「本物だ」と断定してしまったのかわからなかった。

ただ、いかにもフェルメールのタッチで、これまで作品がないとされていた時代の貴重な発見かもしれない、という大きな期待感はプロの判断を鈍らせたのだ。

先述のイライ・サカイ も優秀なお抱えの贋作画家がいたとされる。
本物っぽいルートと作品、そして誰かのお墨付きがあれば疑う余地はない。
「それらしい」「そうであって欲しい」この思い込みが人の目を曇らせる。

今では相当厳しいチェックがあってオークションに出されるゆえ、いくらメーへレンのように技巧の限りを尽くして仕上げたとしても見抜かれる可能性は高いと思うけれど、まだ投資目的のアートがここまで盛り上がっていなかった時代には、いくらでもこんな事件は転がっているものだと思う。

メーへレンの贋作は、今でも美術館で「メーへレン」の作品として展示されていると言う。

体をボロボロにし、50代でこの世を去ったメーヘレン。
画家として輝かしい未来を想像していただろう彼の時代に翻弄された人生は、少し時代がずれていたらまた違っていただろうと皮肉な思いがした。

現代のアート界は高騰し続ける著名作家の作品の価格が、時に批判の対象になったり、画家本人の意向に沿ったものでないなどの問題を抱えている。ただ、紙幣の価値の変動、国の崩壊など先行きの見えない中で、ますますアートへの投資は加熱していくものだと思う。
また資金浄化や虚栄心を満たす手段としても、絵画は画家本人の思いとは別のところでますますその価値を高めている。
本来アートが持つ意味が揺らぐ、皮肉な現状にメーへレンのような熱い復讐心が一石を投じることが、今後もあるのだろうか。


このダークサイドミステリーは次は魔女狩りを取り上げるとのこと。これもまた人々の心理を巧みに利用した事件であると思う。興味深い。

お別れはこんなにも寂しいのか、「コタキ兄弟と四苦八苦」最終回

ついに、来てしまった。「コタキ兄弟と四苦八苦」最終回。

「愛別離苦」・・・愛するものと別れる苦しみ。

スクリーンショット 2020-01-06 8.19.02

さっちゃんがシャバダバを辞めることになった。ただそれは、岐阜にいる母親の旅館を手伝いながら、岐阜の病院に研修に行くことになった彼女ミチルとの未来を感じさせる別れ。
いっぽう、弟の二路も妻とヨリを戻せそう。

別れの時、さっちゃんに何の気無しに提案した「コタキ家宿泊ツアー」に彼女が乗り気になり、三兄弟は初めて食卓を囲むことになる。
束の間の兄と妹ごっこに感極まる2人。
ついには、さっちゃんが昔コタキ兄弟に助けられたことも判明し、再会を予感させる最後の時間を過ごした。

そして!
やっぱり話題となった「三と四」!!!

いい加減で女たらしだったコタキ兄弟の父親零士。

自分が「0」だから子供には数字のつく名前をつけていくと言っていたその言葉を借りると、

一路、二路、そしてさっちゃんは「五月」

三と四の謎を残して最終回は幕を閉じる。
それに気づいて得意げに語る二路(滝藤賢一)、それを知り愕然として頭を抱える一路(古舘寛治)。この対比がレンタル兄弟オヤジの2人を象徴しています。

村田(宮藤官九郎)が三四郎というオチだと思ったのになー。違ったか。

こりゃ続編でしょう!
古舘寛治、滝藤賢一と芳根京子ちゃんの間だもんなー。いきなりイケメン登場でもイイ!
それもちょっとイタイ感じのキャラクターで、顔はいいんだけどねという。
松坂桃李とウエンツ瑛士とかどうですかねぇ。
要潤とか勝地涼とかも面白いかも。
妹がさらにいるよりも、弟の方が面白そうだよなぁ・・・

ワクワクしてきましたー。2時間ドラマなどで復活してほしいー。

ワンクール、12話丸ごと、楽しませてもらいました。
じんわりといいドラマだったな。
人には様々な苦しみがあって、そんな中にポツリと、お金を払えば話を聞いてくれるレンタルオヤジがいる。夜中の街灯みたいに、少しホッとする存在。時には必要だけれど、いつもは気づかない、そういうものが変わらずあることに安心感を覚えました。

一路は真面目すぎるとこも含めていいなぁと思うけど、やっぱり・・・恋人には難しいかな(笑)婚活がうまくいくことは陰ながら祈ってます。
ギャラリー
  • 正直、どっちでもいい、映画「疑惑とダンス」
  • 正直、どっちでもいい、映画「疑惑とダンス」
  • 正直、どっちでもいい、映画「疑惑とダンス」
  • 正直、どっちでもいい、映画「疑惑とダンス」
  • 正直、どっちでもいい、映画「疑惑とダンス」
  • 正直、どっちでもいい、映画「疑惑とダンス」
  • 正直、どっちでもいい、映画「疑惑とダンス」
  • 正直、どっちでもいい、映画「疑惑とダンス」
  • 映画「見えない目撃者」