新作が出るたびに独特の世界観に魅了される鬼才、ペドロ・アルモドバル監督の1991年の作品「ハイヒール」を観ました。




これは母娘の複雑な愛憎劇、そして愛されることを誰でもなく肉親に求めてしまう女の、悲しい運命を描いています。


キャスターであり、全身シャネルで固めた美しい女レベーカ。
彼女が待ち望んでいたのは、一世を風靡した伝説の歌姫であり愛しい母であるベッキーとの再会。恋と仕事を求めてメキシコに渡った彼女と会うのは実に15年ぶりだった。
そしてレベーカはその月日で、ベッキーの元恋人でありテレビ局のオーナーであるマヌエルを夫にしていたのだった。
そこに意図的なものを感じるベッキーは、レベーカとマヌエルの家に招かれ、複雑な思いで2人を見つめる。実は夫婦の仲は冷え切っており、昔と変わらぬ愛おしい視線を向けてくるマヌエルに熱い思い出が蘇るベッキー。
レベーカもそのことを十分承知しているように、2人の様子を影から伺うのだった。



有名で美しい女を母親に持ち、その愛情を一心に受けたいと願いつつも、男と仕事に阻まれて欲望が果たせぬままに大人になったレベーカ。
彼女の愛情表現は自然と歪んだものとなり、母ベッキーが自分のもとに帰ってくるのをずっと待ちわびていた。彼女が手に入れられなかったマヌエルを夫にしたら、彼女が必ず自分のもとにやってくると信じていたのだ。
それがやっと叶ったのだけれど、ベッキーは恋と仕事に身を捧げた女。娘のことは愛していると口にしながらもどこか上の空で、娘が夫に選んだ男のことでは不気味さすら感じている。

そんな母娘の再会後すぐ、マヌエルが何者かに殺された。
話を聞くためにと判事に呼ばれたのは、マヌエルの浮気相手の女、母ベッキー、そして妻であるレベーカの3人。

誰もが彼が殺された前後に殺害場所である別荘に行っており、部屋に入っていたのだ。
殺したのはそのうちの誰かなのではないか。
やがて犯人は自供するのだが、取り調べをした判事は何か裏があるのではと思い始める。

レベーカは、幼い頃母親のためにある計画を実行した。
自分のおかげで自由になった母親だけれど、結局は自分を選ぶことはなく、仕事と恋に奔走し目の前からいなくなってしまう。

もらえるはずの愛情を置き去りにされた彼女は、今度こそ彼女の愛情を受けたいと願うのだけれど、現実はうまくいかず焦りだけが募る。
ベッキーはレベーカの中にある狂気に気づこうとせず、レベーカは自分の人生が母親への深い愛に蝕まれていることに気付いていない。

愛されたい人に愛されない人生の悲劇を、アルモドバル監督が独特の色彩感覚で鮮やかに描ききった本作。
彼の作品では、LBGTの問題や(彼自身が同性愛者)親子関係などが多く取り上げられています。
そんなテーマにもかかわらず、原色に彩られた世界、華やかに色が散りばめられているのに統一感を醸し出せるのはセンスの一言。
重たいテーマでもスタイリッシュに描き出すのです。
あの色彩マジックは、日本で言えば蜷川実花、ただし乙女度は抜いてください。滲んだような赤というよりは、パキッと原色でマットな仕上がりなのがアルモドバル監督。

彼の作品に出てくる部屋はどれもおしゃれで適度に鮮やかで、非常に興味あります。
そういうホテルとか休憩施設とかないのかな。
毎日はしんどいかもですが、一度は体験してみたい。


何と今年の6月に監督の新作が日本上陸予定。
この頃には映画館、行けるようになっているのかな。


アルモドバル監督の作品では、「トーク・トゥ・ハー」が一番好きです。

これはなかなかすごい!収録作品どれも秀逸!


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アミューズソフトエンタテインメント
2005-11-25




小説のこと、映画のことも時々呟きつつ、ブログなどでは語らないふかーい話も・・・

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