奥田英朗さんの同名小説を映画化した「純平、考え直せ」。2018年日本公開。


 

昔気質の下っ端ヤクザ純平(野村周平)。
組長に呼ばれ、対立する組の幹部を殺れと命じられる。いわゆる"鉄砲玉"。
一番に慕うアニキと組長から「残り3日、好きに過ごせ。いいもん食っていい女を抱け」とお金を渡された。
そこに、縄張りのいざこざをまるめようと訪れた怪しげな不動産屋で出会った加奈(柳ゆり菜)が、なぜかくっついてくることに。決行の日まで純平は、加奈とともに贅沢三昧の暮らしを楽しむ。
一方加奈はSNSで、純平との出会いからを事細かに発信し、瞬く間にそれは拡散、誹謗中傷にさらされていくが、ひょんなことから応援の声も混じり始める。

みんな、加奈を心配し、純平をも心配し始めていた。「純平、考え直せ」その声は届くのか。

そして決行の日。



純平は、不良上がりのチンピラだが、義理人情に厚い古いタイプ。
仲間が困っていると聞けば飛んでいくし、その解決は必ずしも格好いいものではないのだけれど、全力で真正面から立ち向かう姿に、加奈は一瞬で惹かれてしまう。

純平は、自分の運命も行く末も何となく感じているのだけれど、性格上臆病風を吹かせるわけにもいかず、どんどん愛しくなる加奈が止める声も聞こえないふりをする。

何とかならないのか。
誰か止められないのか。

SNS上のどうでもいい他人達のように徐々に気持ちが入り込んできて、加奈と純平を応援したくなってしまう。
日頃の出会いの中では何となく感じていても言わないでおくことを、SNSでは感情むき出しで話し合う人々。それは加奈も同じ。

SNSは感情のゴミ捨て場のようになっている側面がクローズアップされることが多く、時として凶器になり得るのだけれど、この物語の中ではその感情のぶつかり合いがまるで青春映画の喧嘩シーンのように清々しいものに転んでいく。

みんなが最後には叫んでいる、「純平、考え直せ」


加奈を演じた柳ゆり菜さんがとても可愛い。
彼女は純平と一緒にいることでとても濃い三日間を過ごすことになり、深く彼を愛すことになる。 純平を止めることは、彼女を救うこと。もし彼を失うことになったら、加奈は一体どうなってしまうのだろう。

たった3日に、人の人生が詰まっている。
その圧倒的な疾走感にため息が出たラストでした。