映画「オー・ルーシー!」を観ました。



婚期を逃し、退屈で平凡な日々を漂うように生きていた節子(寺島しのぶ)。ある日、姉綾子(南果歩)の娘である美花(忽那汐里)から、自分の代わりに英会話スクールに通って欲しいと頼み込まれる。
仕方なく参加した節子は、そこでジョン(ジョシュハートネット)に出会い「ルーシー」という名前をもらうことに。独特の教え方でハグをしてくるジョンの温かみに心がほどけていく節子。トムと名付けられたスクール仲間(小森:役所広司)までできた。
節子の生活にも彩りが生まれたと思っていた矢先、ジョンは突然英会話教室を辞めてしまった。どうやら美花と一緒にロスに行ってしまったらしい。
節子はモヤモヤした気持ちを抱えたまま、ロス行きを決意。綾子までくっついてくることになる。


会社でもこれという張り合いがなく、恋愛についての苦い過去もあり、何事にも投げやりな毎日を過ごしていた節子。
ただ、オープンマインドな英会話講師と触れ合ううちに自分の中の何かが呼び覚まされるのを感じていた。変わる、変われる、そう思ったところだったのに肝心の彼は突然いなくなった。

ここから節子はギアを入れ始めます。取り憑かれたようにロスまでジョンを追いかけ、娘と一緒にいるだろうとついてきた綾子とともに強引に彼の部屋に押しかける。

とても大人の女の行動とは思えないのだけど、ある意味羨ましくもある。あんな風に夢中になって、なりふり構わず気持ちをぶつける事って、もうないんじゃないだろうか。そう思うと、めちゃくちゃで迷惑な節子が何となく可愛らしくも見えてくる。

まぁあんな妹がいたらたまったもんじゃないけれど、それでもロードムービー的な姉妹の旅は感動的な結末を迎えるはずもなく呆気なく終わった。
映画を観て、やはり人の温もりって人を変える、変えさせるパワーを秘めているのだなぁと思う。別にイマドキ、友達なんかがいなくとも交流を図るツールなど腐る程あるけれど、ぎゅっと一度のハグが人生をガラリと変えてしまうってこと、あるんだと思う。

ルーシーという名前をもらいその名前で呼ばれ、金髪のウィッグを渡された節子はある意味もう1つの自分をもらった。数々の選択に失敗し、どうしようもない今を生きている平凡な中年の女ではなく、本来希望に満ちているはずの自分を。

すごい感動というような大きな心の震えはないものの、じわっとくる物語。
節子がワガママで人生諦めたやさぐれた女なら早々に見限っていたけれど、身につまされる不完全燃焼さがまた愛おしかった。これから何かが彼女に訪れることを祈る。