映画「クリーピー 偽りの隣人」を観ました。2016年日本。

犯罪心理学を教える高倉(西島秀俊)は、ある失態が元で辞職した元刑事。
犯罪心理の資料集めとして、とある一家失踪事件に興味を持つ高倉だが、元後輩の野上によりその事件では1人だけ生き残った少女がおり、それとなく調べることを依頼される。
高倉が事件を追ううち、言動におかしなところのある隣人西野(香川照之)との奇妙な類似点が気になりだす。

 

隣人西野は、決して悪い印象を与えるわけではないのだけれど、言動が微妙に常人ではない何かを感じさせる男。
高倉の妻は気味の悪さを感じながらも何となく気になってしまい、徐々に西野の手に落ちていく。

何がと言われたらうまく説明できないのだけれど、薄気味悪い空気感を纏う男と、犯罪心理という特殊な分野に身を置きながらも、過去の失敗や豊富な知識に溺れ正常な判断を失う男。
冷静に考えて、どちらが狂っているのか、どちらが正義なのか、混乱してしまうほどに様々な角度からの視点で見られる映画です。犯罪を犯していないというだけで、事件をまるで興味の対象のように扱い一喜一憂する高倉は、果たしてこちら側の人間なのだろうか。

とにかく香川照之の演技が圧巻。常人と狂気との間をゆらゆらと行ったり来たりする得体の知れない男を実にうまいさじ加減で演じています。
西島秀俊、竹内結子という実力派に並んで、ちょっと東出くんのところで緊張感が途切れるなぁと残念さは残ります。もう少しリアリティのある展開ならばもっと良かったかも・・・隣家の異様さがあまりにも際立っていて、うまく現実と折り合わなかったようなところもありました。

ただ、誰もが自分が基準であり、他人の目から物事を見ることは絶対にないのだということはひしひしと感じさせられます。その自分の基準をも取り上げられてしまったら、人はどうやって生きていけばいいのか。

壊れかけたものが本当に元に戻ったのか、もどかしいほどにわからない呆気ない幕切れでした。
こういう話というのは、嫌な後味になりがちではありますが、それよりも物語の先が気になるというストーリー展開です。
原作と果たしてどの程度リンクしているのか・・・今度ぜひ小説も読んでみたいです。




クリーピー (光文社文庫)
前川 裕
光文社
2014-03-12